あれから、何年だろう?

あの場所で振り返ったら、まだいるような気がする。
戻れるんじゃないかって錯覚しそうになる。
小高い丘の上にある中学校。
下は田んぼだらけで、近くには高速道路へ続く道。
そして山の上には総合公園がある。
自転車で登ってくる道はちょっと曲がりくねっていて、いつも登るときは意地張ってまっすぐ進む。
今日の一日に最善を尽くそう。
そんな、校訓が見えるんだ。

私は陸上部に所属していて。夏場は結構体力づくりのために走らされる。
それに私は短距離だったから…さらに、だ。
丘の上にある学校の周り、田んぼ道を私たちは「最善」コースと呼んでいた。
顧問の先生がそこを走って来い、というのをたまに楽しみにしていたときもある。
その「最善」コースを他の運動部も走るのだ。
もちろん…私の好きな人が所属する部活も。
いつもは体育館で活動するあの人が、靴をはいて校門前に下っていくのを見ると、ふにゃと笑ってしまう。
私はすぐにわかってしまう、誰が好きなのかも。
周りはみんなわかっていただろう。私が誰を好きなのかなんて。

ほら。やっぱり、早く早く。顧問の先生がストレッチを終わった私たちに声をかける。
「ほれ、最善コース2周してアップしてこーい!」
待ってました!というように足早に行く私の背に親友が声をかける。
「おーい、喜びすぎ!(笑)」
夏場のアスファルト上を走るのは私は嫌いだった、けど。
走る彼を見れるのなら、その時だけは好きだ。
校門前からスタート。
赤や黄色のシャツで走るサッカー部。
白のシャツ、そして黒地のジャージのサイドにちょっとしたポイントがあるバレー部。
そして白いシャツに、短パンで走る私たち陸上部。
坂を下り始めて、私は田んぼ道を見渡す。
彼はどこだろう?
お茶畑、田んぼ道。
いずれすれ違うだろうとペースを考えながら走る。
「あ」
見えた。しかもちょうどすれ違う形になる。
「もうばててるんじゃない?」
声をかけると「髪、爆発しとーよ?」
「ばかっ!(笑)」
天然パーマの私は、髪の毛のことでいっつーもいろいろと言われていた。
…思い出したら腹たった。
三年間おんなじクラスだったオトコノコに言われたんだよね。
もう、あー。でもその人のことキライではなかったよ。
でもいろいろとちょっかいだされたりしたので、友達からは絶対その人は私の事が好きだと
言っていた。いじめっこは、そんなもん?

ボールが転がってしまうから。
そんな理由でよく体育館の扉は閉じられてしまっていた。
でも夏場はもちろん暑いからあけっぱなし。
ちゃんと緑のネットで出入り口は塞いであるけれど、中は見える。
部活が終わって友達と談笑しながら、そう…彼の部が使っている場所がよく見える出入り口に
さしかかる。私は言葉もなくして立ちすくんだ。
友達が二、三歩…歩いたところで隣の私の姿がないことに気がつく。
立ちすくむ私の目に見えていたのは白いボールを力強く、打っているあの人の姿だった。
身長のせい?だったのかな…そのせいで彼は補欠だった。いっつも、いっつも。
だから、練習試合だといつもライン際の判定ばかり。はたを持って立ってるのを見てばっかりだった。
でも、今は白いボールを追いかけてる。
なぜか嬉しくて。じいっと見入ってしまっていた。
…しかも気がつけば泣いてしまっていて。
彼がくるりとこっちを向いた。ボールを持ったまま。今度は彼がサーブを打つ番なんだろう。
口元を押さえて、涙目の私とばっちり視線が合う。
「う…」
瞬間、友達が私の腕を引っ張る。
「なんばしよっと、あんたは!て、泣きよーし!なんば見たとよ!?」
「Tがね、Tがね試合してる…嬉しかったと」
頭をぽんぽんと叩かれる。
「はい、はい…(苦笑)ほら、はよー泣き止みんしゃい。うちが泣かしたと思わるっろーが!」

委員会の話し合い。
私の所属している委員会はすぐに話し合いは終わってしまった。
正直、掲示委員会と後期の文化委員は特に仕事もなくとても楽だ。
後期から委員長をしている友達をぼんやりと待つ。
待っている場所は玄関入り口、生徒の下駄箱が見下ろせる廊下。
手すりに寄りかかりながら友達が来るのを待っている。
パタパタとスリッパの音が聞こえる。
友達が来たのかと顔を上げた私の目に、Tが入る。
一度目が合ったが、すぐにそらされる。
もうクラスも違うし、そんなもんなのかとTと他3名の背中を見送る。
…って、ちょっと待って?
職員室に行くのかと思ったら違う。職員室の隣の両開きのドアに入っていった。
私たちがよく知る、鉄板のドアではなく重い木のドア。
そう…校長室。
何?何か、表彰されるようなことでもした?ううん、そんなの知らない。
パタパタとまた、スリッパの音。
どうやら友達の委員会は終わったみたい。
ある女生徒とすれ違う。私の1年生のとき好きだった人の元カノさん。
一言もしゃべったことはないし、同じクラスになったこともない。けど、なんとなくキライだった。
何か嫌な予感がした。委員会の話し合いがあっていた教室の入り口に担当の先生が立っている。
「Nさん」
名前を呼ばれ、先生のほうを見る。
「Fさんのこと、見ててね」
何のことだろうと教室に立ち入る。他の委員の子は出て行ってしまっていてそこにいるのは
委員長である友達だけ。しかもハンカチをにぎってプリントを片付けている。
鼻をすする音で(やっぱり、泣いてる)確信する。
「Kちゃん?」
無言。かばんを置いていた席(自分の教室だったから自分の席)に座り込む。
私も無言で、彼女の席の前に座る。
下手に言葉は出さないほうがいい。というか、どう声をかけていいかわからなかった。
それに彼女も声はまだかけて欲しくなかったみたい。
突っ伏して泣いてる。私は黒い通学かばんの肩紐をわっかにしたり短くしてみたり。
10分くらいかな。友達がポツリポツリと話し出す。
「帰ろうか」
委員会での話し合いで何があったかとか、やっぱりあの子が友達にいろいろと意見したらしい。
友達もあの子がキライだった。いけ好かない。
その意見に打ち負けて友達は泣いてしまっていた。
言葉をかけながら下駄箱へ向かう。そして気がついた。
まだ、下駄箱にあの人の靴があることを。スリッパから履き替えてない。
校長室にいる。
同じクラスの友達に聞いてみる。
「あんたねぇ…」泣き腫らした目でにらまれながらも友達も知らないと答えて。
「そっか」
その後はもちろん、悪口やら何やらオンパレード。
二人自転車を引いて歩きながら。

次の日、友達から真相を聞き「あんのばっかすけ!」とつぶやいた私がいたのは…まぁ、ね。
全校集会でまで言われやがって。アホ。反抗期ですよね。そうですね。

以上、突発私の中学過去話。くぅわー懐かしい。
先日帰るときに中学の夏服(セーラー服)と合服(ジャンバースカート)を見ちゃって。懐かしくて。
戻れそうな気がして。そしてついでにあの農道を帰っているTが見えるような気がして。
こんなことを考えたのは、佐世保に行った帰りにソフトクリーム食べたせいですか?
(ソフトクリームを売っている場所がその、好きな人の家と近かった。古傷えぐられた)
あえないかななんて思った私もいたわけです。だって東京から帰ってきてそうなんだもの。
彼の家は前の私の家と感じが似ているんだよね。帰るときにちらりと見たけれど遠めだったから誰か
住んでいるかは確認できなかった。もう引っ越してるかもしれないもんね…。私だってあの家にはいないし。
切なくなっちゃった。

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